
歯の痛みといっても、原因はひとつではありません。
むし歯が進行して神経に炎症が起きている場合もあれば、歯ぐきの腫れ、噛み合わせ、食いしばり、親知らず、過去に治療した歯の根のトラブルなどが原因になっていることもあります。
また、歯そのものに問題がなくても、副鼻腔炎や顎関節症、神経の痛みなどによって「歯が痛い」と感じるケースもあります。痛みの原因を自己判断することは難しく、痛みが一時的におさまっても、治ったとは限りません。
このページでは、歯の痛みの原因として考えられる代表的な10のケースを紹介します。
強い痛み、腫れ、噛むと痛い、痛みが続く、痛み止めを飲んでも改善しないといった場合は、早めに歯科医院へご相談ください。
1.歯髄炎(しずいえん)
歯の痛みレベルはナンバーワン。むし歯の進行が神経を死滅させてしまう。原因は、放置したむし歯が主な原因のことが多い。むし歯を引き起こした細菌が歯の神経(歯髄)に直接触れることで急性の炎症を引き起こし、夜も眠れないほどの激痛となる。何とか根性で乗り切って痛みが消えたとしても、それは神経が壊死した証拠。感染した細菌はそのまま歯髄に停滞し、さらに放置すると慢性の「根尖性歯周炎」に移行していく。治療と対策としては、いったん死滅した歯髄が回復・再生することはなく、神経を取り除いて根管を密閉する治療が行われる。神経を取った歯は構造的に脆くなるため、むし歯はできるだけ早期に治療するのが鉄則である。
2.根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
細菌が歯根の先へと広がって周辺組織に炎症を引き起こす。原因は、歯髄内の細菌が歯の先端(根尖)から逸脱し、歯周組織に炎症が広がった状態。最も一般的な原因は、むし歯の放置により壊死した歯髄で増殖した細菌による炎症。また、過去の根管治療(神経を取り除く処置)が不十分で細菌が残っていたり、何らかの原因で根管内に細菌が増殖するなどで、時間が経って症状が表れる場合もある。炎症が急性化すると歯茎が腫れ、膿が溜まって痛みを生じたりもする。さらに、膿が顎の骨を伝って顔面や副鼻腔へ炎症が広がり、重症化するケースもある。治療と対策は、神経(歯髄)を完全に取り除き、根管内を洗浄・消毒して密閉する根管治療を行うのが基本。改善しない場合は、歯茎を切開して感染した組織を除去する外科的処置も検討される。
3.急性歯肉炎(きゅうせいしにくえん)
炎症を抑えつつ、免疫力を高める生活が再発予防のカギとなる。原因は、歯茎が腫れる根本的な原因は、むし歯と歯周病の大きく2つ。死滅した歯髄から炎症が広がって歯茎が腫れるのは上記の「根尖性歯周炎」で説明したとおりである。さらに、慢性の歯周病が急性化した炎症に加え、両者が合体したケースも見受けられる。治療と対策は、炎症を抑える治療では抗生剤や消炎剤等の服用するほか、炎症がひどい場合には切開をして膿を出す処置を行うこともある。また特に歯周病が原因の場合、その再発予防には、免疫力の向上が不可欠である。痛みが落ち着いている場合は、入浴などで血流改善とリラックスを心がけ、栄養バランスの取れた食生活も必要になってくる。
4.歯根膜炎(しこんまくえん)
感覚センサーの歯根膜に炎症が起きて痛みが発生する。歯と骨をつなぐ薄い膜組織に炎症が生じる歯根膜炎。歯根膜は、嚙むときに歯を支えるクッションの役割を果たし、感覚受容器として歯応えを感じる敏感な部分でもある。以下のような物理的要因で血流が悪化して貧血状態になり、炎症や痛みが生じるケースも多い。
4.1 食いしばり
歯に強い力が加わって歯根膜の血流が悪化する。日常的な食いしばりや歯ぎしりによって、嚙み合わせが不安定となり一部の歯に強い力が加わると、毛細血管とコラーゲン線維で構成される歯根膜の血流が悪化して炎症が起きる。これらは非感染性の歯根膜炎で最も多い原因となる。過度に加わる力を調整するために歯を削って高さを調整したり、マウスピースなどで食いしばりによる負荷を取り除く対策も必要な場合がある。
4.2 食片圧入
歯周ポケットに蓄積した食物繊維が激痛を引き起こす。歯周ポケットに入り込んだ食べカスが蓄積して歯根膜炎になるケースもある。食片が残りにくいような歯冠形態を作らなければいけないこともある。予防と再発防止のためには、毎食ごとのフロスや歯間ブラシの使用が推奨される。
5.歯の痛みは、歯以外が原因で起こることもあります
歯が痛いと感じると、まずむし歯や歯周病を疑う方が多いかもしれません。
しかし、実際には歯そのものに大きな異常がなくても、副鼻腔の炎症、顎関節症、噛み合わせ、神経の痛みなどが原因で「歯が痛い」と感じるケースがあります。
このような痛みは、自己判断では見分けにくく、歯科治療だけでは改善しない場合もあります。
歯科医院でお口の状態を確認し、必要に応じて耳鼻咽喉科や医科と連携しながら原因を調べることが大切です。
6.上顎洞性歯痛(じょうがくどうせいしつう)
副鼻腔の炎症が原因となって隣接する奥歯に痛みを感じることがある。原因は、副鼻腔を構成する上顎洞の炎症(副鼻腔炎)が原因となる痛み。上顎洞は奥歯の上にあり、特に加齢で骨が薄くなると、奥歯の痛みのように感じることもある。治療と対策は、副鼻腔炎は風邪などでも引き起こされ、この場合の治療は耳鼻咽喉科が行う。反対に歯の炎症から歯原性の副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)を起こすこともあり、この場合は歯の治療をしないと上顎洞の痛みは治まらない。いずれにしても、治療の際は両科の連携が必須となる。
7.顎関節症(がくかんせつしょう)や噛み合わせの不調
原因は、口の開けづらさや痛み、開閉時の関節音などをともなう顎関節症。嚙み合わせの不調も一因とされ、これらが相互に影響して歯に痛みが生じる場合がある。治療と対策は、顎関節症の要因は日常習慣から精神的要因まで多岐にわたるが、口を閉じたとき上下の歯を嚙み合わせるクセも大きなリスクに。その根本的な原因となる筋肉の緊張や顎関節を歪ませるクセを取り除く必要があり、大学病院などで専門の科を受診が必要な場合も考えられる。
8.非歯原性疼痛(ひしげんせいとうつう)
原因は、歯には原因がないのに、脳神経のシナプスがいわば誤作動を起こして痛みを引き起こすもの。原因により多くの分類があるが、筋肉の痛みから来る歯痛(関連痛)、神経のどこかに障害が生じる神経障害性歯痛、頭痛が由来する神経血管性歯痛、心疾患に関連した心臓性歯痛、さらに精神疾患による歯痛などがある。治療と対策は、原因を見極めるため、まず高度先進医療機関の受診が必要。そのうえで、各専門科での治療が行われる。
9.親知らずの痛み
一部でも露出して痛みがあれば将来のリスクも踏まえ抜歯を検討。親知らずの痛みの原因で、まず挙げられるのが成長過程によるもの。他の永久歯に比べて成長が遅いため隣の歯を圧迫したり、全体の歯並びに悪影響を与えたりする。ただし、これは10代後半から30歳くらいまでの間のこと。それ以後は親知らずが完全に埋伏していれば大きな問題はないが、たとえ一部でも露出していれば、それは常に口内細菌にさらされた状態にある。磨きにくい部分のため、むし歯や歯周病による炎症のリスクも高くなる。また長年、放置したまま骨がもろくなる高齢期に感染が全身へ広がり、重症化しても抜歯が困難になるケースも少なくない。そのため、もし1度でも痛くなった親知らずがあれば、早めに抜歯を検討することが勧められる。
10.詰め物の脱離
歯がしみる場合は詰め物をそっと戻して早めの処置を推奨する。パンやキャラメルなどにくっついて詰め物が取れるのはよくある話で、嚙む力が強すぎる場合や、歯との隙間にできたむし歯も原因としては多い。詰め物が取れたらこれを持参し、何ともなくても歯科医院で早めの処置を勧める。むし歯があれば、削って新しい詰め物を作り直す治療が行われる。もし診察までに時間が空いたとしても、自己判断で詰め物を接着するのは厳禁。また、詰め物を無理に戻して食事をすると、変形して使えなくなることもあるので注意が必要である。また、厚手のガーゼマスクがあれば、息を吸うときに空気が温まって痛みが和らぐはずである。痛みがあるのは神経が生きている証拠なので、いずれにしても早めの受診を心がけよう。
すぐ歯医者に行けないときの痛み対策4選
歯の痛みが発生したら、すぐ歯科医院へ直行するのが基本。とはいえ夜間や休日などで難しい場合は、こんな方法で乗り切ろう!
- 合谷のツボを押す。熱を排出する作用があるといわれ、歯の痛みをやわらげることでも知られる特効ツボ。手の甲で人差し指と親指の骨が合流するところからやや人差し指寄りにある。イタ気持ちよく感じる程度の力で5〜10分程度、反対側の親指で押す。
- カラダを温めない。お風呂やこたつに入ると、カラダが温まって痛みが強くなる。症状が落ち着いている場合はリラックスして免疫力を高めるためにも入浴はおすすめだが、炎症がひどくてズキズキ痛む時はシャワーにとどめておこう。
- 頰を冷やす。氷水に浸したタオルをギュッと絞って頰全体を覆い、タオルが温まるまでじんわりと冷やす。炎症がある部分は血流が局所的に悪化しているため、冷却シートなどで長時間冷やし続けるのはNG。
- 鎮痛剤を使用する。最も一般的な痛み止めは、薬局でも市販されているロキソニン。炎症を鎮めると同時に痛みをやわらげる消炎鎮痛剤として、処方薬にも広く用いられている。痛みが強いときの頓服薬として、よりシャープに効くのはボルタレン。痛みの程度によっては座薬も選択肢となるが、いずれも処方薬のため、必ず歯科医師の指示のもとでの使用が必要である。