むし歯は原因菌が酸を出し、歯を溶かすことで起こります。
プラーク(歯垢)の中に潜んでいるむし歯の原因菌は、糖を栄養にして酸を出します。その糖の元となるのが食べかすです。
食事後の歯磨きがしっかりできていないと、食べかすを栄養にして、菌はどんどん酸を作り出し、むし歯になりやすい状態を作ります。
人の唾液には酸を中性にしたり、溶かされた歯を修復する働きがありますが、一度むし歯になると、修復が間に合わず進行してしまいます。
治療の生存率について
虫歯の治療にどのような材料を使用するのかというご相談をしばしば受けることがあります。
日本には国民皆保険制度があり、保険診療で虫歯を治すことができますが、保険診療では認可を受けた材料のみが使用可能となっています。金属の詰め物(メタルインレー)または、コンポジットレジン(CR)充填が主に用いられますが、虫歯の大きさや範囲によっては被せもの(クラウン)による修復するが必要な場合もあります。
諸外国の治療に使用する材料との比較が難しく、保険診療に使用する材料の生存率に関する研究はほとんどありませんが、青山ら(①)の報告によると5年、10年間のそれぞれの修復物生存率の結果は下記のように報告されています。
各修復物の5年・10年生存率
修復物名 |
生存率(%) |
5年 |
10年 |
メタルインレー |
88 |
67.5 |
コンポジットレジン |
73.5 |
60.4 |
4/5冠 |
78.4 |
60.5 |
メタルクラウン |
74.8 |
55.8 |
メタルブリッジ |
55.6 |
31.9 |
計 |
72.9 |
55.0 |
再治療が必要となる主な原因としては、再び虫歯となる二次カリエスや、修復物の脱落などが挙げられます。日本歯科保存学会によるう蝕治療のガイドラインによれば、CR修復の有用性が記載されており、CRとメタルインレー修復には臨床的な有意差はないとされています。
Minimal Intervention(MI)の概念より、CR修復は接着性の向上とともに審美的な部位にも使用できるという観点から、近年CR修復の優位性は向上してきています。
一方、保険診療では認められていない自由診療では、セラミックやゴールドを使用した修復方法があります。セラミックインレーにおける5年生存率は96%、10年生存率でも91%と保険診療の修復物に比べて高い数字になっています。また、ゴールドインレーにおいても10年生存率は96%という報告がなされています(②③)。
保険診療で使用される金属にはパラジウム、インジウム、亜鉛のような金属アレルギーを引き起こす可能性のある金属を含んでいますが、ゴールドは保険の金属と比較してアレルギーは引き起こしにくく、またセラミックに関してもほとんどないと考えられています。
材料の強度や金属アレルギーといった観点から自由診療で用いる材料は優れているといえます。
患者さんの口腔内の状態によって、治療方法の選択は異なってきますのでご来院いただきご相談ください。