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山中歯科医院

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スポーツ歯科とマウスガードに関して

Sports dentistry

Sports dentistryスポーツ歯科とマウスガードに関して

スポーツに起因する歯科外傷は、特に上の前歯に起こりやすく、顎口腔機能の低下だけでなく、審美的な障害を起こすこともあります。口唇や頬粘膜の裂傷など粘膜(軟組織)に対する傷は比較的すぐに見つかり、その傷の程度に応じて歯科医院を受診すべきか否かは選手自身でも判断は可能かと思われます。一方、歯の神経の壊死、歯根の破折や顎(あご)の骨折などの硬組織に対する損傷は、レントゲン撮影を行うことで初めて診断できることもあります。顎口腔領域に対する外傷受傷後、何も症状が現れないからといって放置はせずに、歯科医院を受診して適切な診査・診断を受けることをお勧めします。

口腔領域の重篤な外傷を防ぐ有効な手段として、マウスガード(MG)の着用を推奨いたします。MG使用者と非使用者の歯科外傷発生率を比較した論文によれば、MG非使用者の外傷発生率はMG使用者の約7倍にも達すると報告されています(図1)。

図1
図1
Fernandes LM et al The use of mouthguards and prevalence of dento-alveolar trauma among athletes: A systematic review and meta-analysis. Dent Traumatol, 35(1): 54-72, 2019

MGには様々な種類があります。マウスフォームドタイプと呼ばれる市販MGは選手自身によって調整が可能ですが、適切な調整が困難で違和感が強く、また呼吸しにくく、口を開けるとすぐに外れてしまうなどの問題点が指摘されています。それに対して、歯科医院にて製作するカスタムメイドタイプMGは、歯科医師によって選手個々に対して製作されるため、適切な調整が行えるうえに噛み合わせの調整もすることができます。そのため、カスタムメイドMGは市販MGと比較して様々な問題点を軽減できることが報告されています。

近藤・山中らの調査では、市販MG使用者のうち81.8%が発音や呼吸障害に対して、その使用感に不満があることが明らかになっています。また、市販MGとカスタムメイドMGの使用感の違いを比較したアンケート調査の結果によれば、多くの項目においてカスタムメイドMGが優れていることを報告しています(図2)。MG使用者の大半が使用感に不満をいだいているような市販MGの使用は、スポーツパフォーマンスにも少なからず影響があるのではないかと思われ、異物感の少ないカスタムメイドMGの使用をお勧めします。

図2
図2
Kondo G , Yamanaka T et al Dental support activities for amateur boxers participated in the 2005 Kyushu high school athletic competition – A questionnaire survey after wearing a custom-made mouthguard-. J Sports Dent 11: 33-38, 2007.

カスタムメイドMGは、競技種目のルールや競技特性に応じた設計やデザインを付与することが可能です。アメリカンフットボールやボクシングのようなコンタクトスポーツの一部ではMGの使用が義務付けられており、その競技特性に応じて適切な形態が付与されたカスタムメイドMGの使用は、競技時の外傷予防ならびにスポーツパフォーマンスの観点からも有効なものと考えられます。

当院では、一般スポーツ愛好家からプロスポーツ選手まで様々な患者様に対して、競技特性に応じたカスタムメイドMGを提供しております。

また、日常生活を送るうえで噛み合わせの確立が重要であることは周知の事実ですが、スポーツにおいても噛み合わせは重要なものと考えられています。奥歯の噛み合わせがない患者様が入れ歯を装着すると、咀嚼能率(食べ物をかみ砕く力)は2倍になり、咬合力は1.4倍になるとも言われています(図3)。スポーツの種類や特性によっても違いはありますが、噛み合わせがしっかりしていていれば、競技力にネガティブな影響を及ぼすことはないと考えられます。そのため、スポーツ選手においても適切な口腔内環境を整えておくことは、日々のスポーツパフォーマンスを維持するうえでもとても重要であると考えます。

図3
図3
Ikebe, et al. J Jpn Prosthodont Soc, 51, 710-716, 2007

また、ご自身の歯と歯で噛みしめることよりも、カスタムメイドMG使用時における噛みしめのほうが、遠位筋の筋活動量が7.5%も増加することが報告されています(図4)。そのため、カスタムメイドMGの使用が更なる運動パフォーマンス向上に寄与する可能性があることも示唆されます。(但し、すべての運動に対して噛みしめが有効な訳ではありません。さらに詳しく知りたい方はご来院いただき聞いてください。)

図4
図4
Wang, et al. Bull Tokyo Med Dent Univ (43)1-12, 1996

カスタムメイドMGは一度製作すれば、ずっと使えるわけではありません。食いしばり等によってMGには穴があき、頻回に使用することで材料には劣化が生じ、経年的な衝撃吸収能力の低下が生じます(図5)。MGの交換時期については、競技シーズン終了後や製作後少なくとも1年が経過したら、かかりつけの歯科医院にて調整や交換の相談をしていただければよろしいかと思います。

図5
図5
提供した選手へのマウスガードの一例

大好きなスポーツを安全にかつ安心に長く続けていくためにも、カスタムメイドMGの使用をお勧めします。MGに関してご質問がありましたら、是非ご来院いただきご相談ください。よろしくお願いいたします。

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